2019年03月13日

民法1−17 時効 行政書士試験過去問 2009年問28

次の相談内容のうち、できますと回答し得るものはどれか。




1、私は13年前、知人の債務を物上保証するため、私の有する土地、建物に抵当権を設定しました。知人のこの債務は、弁済期から11年が経過していますが、債権者は、4年前に知人が債務を承認していることを理由に時効が完成していないと主張しています。

民法によれば、時効の中断は当事者及びその承継人の間でのみ、効力を有するとありますが、私は時効の完成を主張して、抵当権の抹消を請求できますか。

2、私は、築25年のアパートに賃借して暮らしていますが、このアパートは、賃貸人の先代が誤って、甲氏の所有地を自己所有地と認識して建ててしまったものですが、これまで特に問題はありませんでした。

この度、甲氏の相続人乙が、一連の事情説明と共に、アパートからの立ち退きを求めてきました。私は、賃貸人が敷地の土地を時効取得したと主張して、立ち退きを拒否できますか。

3、30年ほど前に私の祖父が亡くなりました。祖父は唯一の遺産であった自宅の土地、建物を祖父の知人に遺贈したため、相続人であった私の父は、直ちに遺留分を主張して、当該土地、建物について共有持ち分が認められたのですが、その登記をしないままに、今日に至っています。

この度、父が亡くなり、私が単独相続し、先方に共有持ち分についての登記の協力を求めたところ、20年以上経過しているので、時効だと言って応じてもらえません。私は移転登記を求めることができますか。

4、私は、他人にお金を貸し、その担保として債務者の所有する土地建物に、二番抵当権の設定を受けています。この度、一番抵当権の被担保債権が消滅時効にかかったことが分かったのですが、私は、私の貸金債権の弁済期が到来していない現時点において、この事実を主張して、私の抵当権の順位を繰り上げてもらうことができますか。

5、叔父は7年ほど前に重度の認知症になり、後見開始の審判を受けました。配偶者である叔母が後見人になっていたところ、今年2月10日に、叔母が急逝し、同年6月10日に甥の私が後見人に就任しました。

就任後、調べたところ、叔父が以前に他人に貸した300万円の債権が10年前の6月1日に弁済期を迎えた後、未回収のまま、放置されていることを知り、慌てて、本年、6月20日に返済を求めましたが、先方は時効期間が満了していることを理由に応じてくれません。この債権の返還を求めることができますか。







建太郎「むむっ……。こりゃめちゃめちゃ難しいじゃん!」

胡桃「変わった出題形式だけど、結局のところ、判例の知識を問うだけの問題よ。そんなに難しくないわ」
胡桃「まず、1は何が問題になるかわかるかしら?」

建太郎「ええっと……。物上保証人が被担保債権の消滅時効を主張できるかという問題だな」

胡桃「そうよ。どう考えるべきかしら?」

建太郎「判例によると、物上保証人が被担保債権の消滅時効を主張することはできないとされていたよな」

胡桃「そうね。物上保証人は、債務者の承認により被担保債権について生じた消滅時効中断の効力を否定することができない。 とするのが判例よ。民法396条の趣旨に反するからね。条文を確認しておくわよ」




(抵当権の消滅時効)

第三百九十六条 抵当権は、債務者及び抵当権設定者に対しては、その担保する債権と同時でなければ、時効によって消滅しない。




胡桃「2はどうかしら?」

建太郎「賃借人が、賃貸人による時効取得を援用することができるかどうかの問題だな」

胡桃「そうよ。どう考えるべきかしら?」

建太郎「賃貸人が時効取得を主張しているならともかく、賃借人が勝手に時効取得を主張するのは無理があるんじゃないかな」

胡桃「そうね。判例も、建物賃借人は、建物賃貸人による敷地所有権の取得時効を援用することはできない。 としているわ。時効を援用できるのは当事者に限るということよ。条文にも次のように定められているわ」




(時効の援用)

第百四十五条 時効は、当事者が援用しなければ、裁判所がこれによって裁判をすることができない。




胡桃「3はどうかしら?」

建太郎「共有持ち分、つまり、所有権が時効にかかるかどうかの問題だな」

胡桃「常識でわかるわね。所有権は消滅時効にかかることはないわ。ということは、何十年経っても登記請求権を有しているということよ。判例も次のように解釈しているわ」




遺留分権利者が減殺請求により取得した不動産の所有権又は共有持分権に基づく登記請求権は、時効によって消滅することはない。




建太郎「なるほどな」

胡桃「4はどうかしら?」

建太郎「うーん。二番抵当権者は、一番抵当権の被担保債権の債務者ではないし、消滅時効を主張することは難しいかな? それに、わざわざ、抵当権の順位を繰り上げる意味もないだろうし」

胡桃「そうね。判例も、『後順位抵当権者は、先順位抵当権の被担保債権の消滅時効を援用することができない。 』としているわ」

建太郎「やっぱりそうだよな」

胡桃「5はどうかしら?」

建太郎「うーん。2月10日から6月10日までの間は、後見人がいない状態になるんだよな。ということは、その間は、消滅時効は進行しないんだっけ?」

胡桃「その通りよ。次の条文ね」




(未成年者又は成年被後見人と時効の停止)

第百五十八条 時効の期間の満了前六箇月以内の間に未成年者又は成年被後見人に法定代理人がないときは、その未成年者若しくは成年被後見人が行為能力者となった時又は法定代理人が就職した時から六箇月を経過するまでの間は、その未成年者又は成年被後見人に対して、時効は、完成しない。

2 未成年者又は成年被後見人がその財産を管理する父、母又は後見人に対して権利を有するときは、その未成年者若しくは成年被後見人が行為能力者となった時又は後任の法定代理人が就職した時から六箇月を経過するまでの間は、その権利について、時効は、完成しない。




建太郎「1項の規定が適用される場面だということだな。この人が、6月10日に後見人に就任してから、六箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。と、だから、請求できるわけだ」

胡桃「そうよ。ということは答えはどれか分かるわね?」

建太郎「3と5に関してはできると回答できるわけだな」



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posted by 実務で学ぶ資格試験プロジェクトチーム at 19:36| 行政書士試験過去問