2019年06月13日

民法1−58 債権各論 行政書士試験過去問 2011年問33

Aの隣人であるBは、Aの不在の間に、台風によってA所有の甲建物の屋根が損傷したため、修繕を行った。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例に照らし妥当なものはどれか。




1、Bは、Aからあらかじめ、甲の管理を頼まれていなかったにもかかわらず、Aのために、修繕を行ったが、強風にあおられて、屋根から落下してしまい、受傷した。この場合、Bは、Aに対して、損害賠償請求ができない。

2、Bは、Aから不在時の甲の管理を頼まれていたために、修繕を行ったが、屋根から降りる際に、不注意で足を滑らせて落下し受傷した。この場合、BはAに対して、損害賠償請求ができる。

3、Bは、Aからあらかじめ、甲の管理を頼まれていなかったにもかかわらず、Aのために修繕したが、それがAにとって有益であるときは、BはAに対して、報酬を請求することができる。

4、Bは、Aからあらかじめ、甲の管理を頼まれていなかったにもかかわらず、工務店を営むCに修繕を請け負わせた。このようなBの行為は、Aのための事務管理に当たるから、これにより、Cは、Aに対して、工事代金の支払いを直接に請求できる。

5、Bは、Aからあらかじめ甲の管理を頼まれていなかったにもかかわらず、工務店を営むCに修繕を請け負わせたが、実はAがCによる修繕を望んでいないことが後になって判明した。このような場合、甲にとって必要不可欠な修繕であっても、BはAに対して、その費用の支払いを請求することができない。










胡桃「これも条文レベルの出題だわ」

建太郎「うん。簡単だな」

胡桃「1はどうかしら?」

建太郎「正しいな。事務管理によっては損害を被っても、他人に対して損害賠償請求はできないよな。勝手にやったんだから」

胡桃「そうね。第七百二条が、第六百五十条第三項を準用していないからよ」




(管理者による費用の償還請求等)

第七百二条 管理者は、本人のために有益な費用を支出したときは、本人に対し、その償還を請求することができる。

2 第六百五十条第二項の規定は、管理者が本人のために有益な債務を負担した場合について準用する。

3 管理者が本人の意思に反して事務管理をしたときは、本人が現に利益を受けている限度においてのみ、前二項の規定を適用する。




※(受任者による費用等の償還請求等)

第六百五十条 受任者は、委任事務を処理するのに必要と認められる費用を支出したときは、委任者に対し、その費用及び支出の日以後におけるその利息の償還を請求することができる。

2 受任者は、委任事務を処理するのに必要と認められる債務を負担したときは、委任者に対し、自己に代わってその弁済をすることを請求することができる。この場合において、その債務が弁済期にないときは、委任者に対し、相当の担保を供させることができる。

3 受任者は、委任事務を処理するため自己に過失なく損害を受けたときは、委任者に対し、その賠償を請求することができる。




胡桃「2はどうかしら?」

建太郎「今、取り上げた、第六百五十条第三項にある通りだな。損害賠償請求は、自己に過失なく損害を受けたときに限ってすることができる。設問では過失ありとなっているから、損害賠償請求できないと」

胡桃「ちなみに、2のようなケースでは、ABはどういう関係になるかわかるかしら?」

建太郎「委任の関係じゃないの?」

胡桃「ぶー。不正解」

建太郎「えっ?違うの?」

胡桃「委任は、法律行為に関するものでしょ。建物の管理は法律行為とは言えないわ」




(委任)

第六百四十三条 委任は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる。




建太郎「あっ。準委任だっけ」




(準委任)

第六百五十六条 この節の規定は、法律行為でない事務の委託について準用する。




建太郎「いずれにしても、委任の規定が適用されることに関わりはないよな」

胡桃「3はどうかしら?」

建太郎「事務管理は報酬を請求できるわけてはないよな。ただ、有益費については、償還請求ができると」




(管理者による費用の償還請求等)

第七百二条 管理者は、本人のために有益な費用を支出したときは、本人に対し、その償還を請求することができる。

2 第六百五十条第二項の規定は、管理者が本人のために有益な債務を負担した場合について準用する。

3 管理者が本人の意思に反して事務管理をしたときは、本人が現に利益を受けている限度においてのみ、前二項の規定を適用する。




建太郎「1項にある通りだな」

胡桃「そうね。ちなみに、報酬を請求できないことの根拠は?」

建太郎「次の条文だな」




(委任の規定の準用)

第七百一条 第六百四十五条から第六百四十七条までの規定は、事務管理について準用する。




建太郎「第七百一条が、第六百四十八条を準用していない」




(受任者の報酬)

第六百四十八条 受任者は、特約がなければ、委任者に対して報酬を請求することができない。

2 受任者は、報酬を受けるべき場合には、委任事務を履行した後でなければ、これを請求することができない。ただし、期間によって報酬を定めたときは、第六百二十四条第二項の規定を準用する。

3 委任が受任者の責めに帰することができない事由によって履行の中途で終了したときは、受任者は、既にした履行の割合に応じて報酬を請求することができる。




胡桃「4はどうかしら?」

建太郎「これは判例だよな。費用はあくまでも管理者が支払いべきで、本人に負担させるものではないと」

胡桃「そうね。判例も、事務管理者が本人の名でした法律行為の効果は、当然には本人に及ぶものではない。としているわ」




事務管理は、事務管理者と本人との間の法律関係を謂うのであつて、管理者が第三者となした法律行為の効果が本人に及ぶ関係は事務管理関係の問題ではない。従つて、事務管理者が本人の名で第三者との間に法律行為をしても、その行為の効果は、当然には本人に及ぶ筋合のものではなく、そのような効果の発生するためには、代理その他別個の法律関係が伴うことを必要とするものである。(最判昭和36年11月30日)




胡桃「次、5はどうかしら?」

建太郎「第七百二条3項のとおりだな。管理者が本人の意思に反して事務管理をしたときは、本人が現に利益を受けている限度においてのみ、前二項の規定を適用する。とされている。だから、償還請求は可能だ」

胡桃「というわけで答えはどれかしら?」

建太郎「1だな」




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posted by 実務で学ぶ資格試験プロジェクトチーム at 21:16| 行政書士試験過去問